きっかけは突然の解約・立ち退き話
神奈川県で長いこと食料品の製造・販売業を行っていたOさん。
ある日突然、貸主から急な立ち退きによる解約通告を言い渡され、何軒か不動産屋に相談したものの解決に至らずに困惑していたそうです。
店舗を借りていたのですが、目立った老朽化や収用、競売という理由も該当せず納得がいかない上に、従業員も抱えているだけに死活問題ですよね。通常なら、相応の時間の猶予を与える必要があると思いますが、「直ぐに解約」と一方的だったそうです。
突然の解約通告は困る
裁判してまで争うべきか
何か他の策はないか
そこで、知り合いから当社を紹介いただきました。
貸主により解約は「正当事由」が必要
普通借家契約の場合、この正当事由というのが余程の事情がない限りは認められません。
令和3年に築80年の借家で老朽化と耐震補強が困難という理由で70代後半の入居者に明渡しを求めた裁判でも正当事由は認められず、貸主が敗訴した判例がありました。
Oさんも裁判に持ち込むことで勝訴する可能性は見込めると思いますが、裁判は時間と費用と心労が伴うから心身の負担も大きくなります。それに、この地主は地元でも悪評が高く、このまま長く付き合うよりも、気持ち新たに切り替える良いタイミングと捉えることもできます。
冷静に最善の判断をするために、今後の想定も含めて気持ちの整理から始めることにしました。
一旦立ち止まって、これからの事業戦略を考える
まだこれから15年は仕事する予定であること、これまで少しずつ蓄えてきた資金があること、他にも現状の家賃や収支をヒアリングした上で、3つのプラン(選択肢)を提案させていただきました。
貸主と努力して和解し、現状を維持する
新たに貸店舗を探す
自社物件を保有する
3つの選択肢のそれぞれのメリットとデメリット、数字の違い、将来の違いを視覚化することで比較しやすくして、自分の本心に近いイメージが湧き、判断しやすくなります。
融資は負担だが、店舗の賃料は負担も大きい
仮に家賃を40万円としましょう。これまで15年借り続け、今後もあと15年続けたいと見込んだ場合、15年間支払ってきた賃料は7,200万円となり、今後も同じ金額がかかるため、総額で1億4,400万円となります。
賃貸の場合、ローンの返済という負債もなく、いつでもお店をやめられるのがメリットの一つです。一方で、これまで支払ってきた賃料とこれからの賃料を併せた額は1億4,400万円になりますが、自分の資産には残らず、かけた費用の資産価値は0となります。
ご家族ともよくよく相談され、今後のご意向やご家族のこと、不測の事態も想定して「3.自社物件」を保有することを選択されました。
借金=負債ですが、一方で少ない自己資金で大きなものを動かす”活用資源”という捉え方もできます。これまでの賃料と同額以下の返済で済むような土地を探し、建物のプランの見積もりも進め、銀行に提出する「事業計画書」の作成も手伝い、健康面でも特段問題はないため団信にも加入が出来ることが分かり、順調に進みました。
賃貸or自社物件を保有する大きな違い
これまでの賃料よりも返済額を抑え、団信に加入することで、いざという時の保険で残債が保障されること、また事業をやめたときの不動産の資産価値を事前に想定することで、売却すれば老後の資金として残すこともできます。自営業の場合は国民年金のため年金収入としては頼りないため、資産面でも決断のポイントとなったそうです。
もちろん、いざという時に”売れる物件を選ぶ”ことは外せません。そして、リスクも想定し、不測の事態が起こっても十分に耐えうる試算結果となったため、安心して大きな決断を下すことができたとおっしゃっていました。
あれから10年経過して
先日、久しぶりにOさんのお店に顔を出しました。
お変わりなくお元気そうで、今では都内のデパートにも出店して順調とのことでした。返済もあと数年で完済する予定だそうで、完済してしまえば事業の収支もぐっと良くなることでしょう。「あの時、決断して良かった。」と仰ってました。
お客さまの転機に携わることができ、英断を見届け、その後の経過が良い方向に進んでいることは、どんな苦労も一瞬で吹き飛んでしまうほど大きな喜びです。
Oさんのご健勝とご盛栄を心よりお祈り申し上げます。
